裏切られても信じてる私は馬鹿ですか?
「愛してる。どんなに離れても」
別れ際に彼方はそう言った。
私は、その言葉を信じた。
「うん、私も。だから、待ってる。」
「本当に、ごめんな。」
そう言って、彼方は私を優しく抱きしめてくれる。
約束のようなおまじないのような抱擁。
私は、彼方の腕の中で感じる彼方の体温で心まで温められる。
至福のひと時。
月に何日も帰ってこないことはほとんど。
それでも、この抱擁のぬくもりは離れてる時間が長ければ永いほど嬉しさの度合いが増す。
優しい彼方のぬくもり。
叶わない恋をし続けてることになっても。
彼方の気持ちが本当はここにはないことぐらいしってるのに。
私は彼方のぬくもりを求めて信じて待ってる。
彼方がまた家を出て、1週間が過ぎたころ電話がなったの。
女性からの。
「もしも、奥さまですか?」
「はい。どちらさまでしょうか?」
「晴海です。ご存知ですよね?」
「ええ、主人の幼馴染の晴海さんですよね。」
「そう、知ってたんですか。じゃぁ、彼が、ご主人が私と付き合ってることも?」
とてもはっきりと物をいう女性。それが、本当に彼方が愛してる女性。
晴海さん。
「はい。」
「あなた、旦那に浮気されてること知ってたの!」
私の回答に晴海さんはどうようしたのか声が裏返っていました。
「ええ、知ってます。主人の気持ちは、私にはありません。私は主人のことをどんなに思っていても。主人は優しい人です。だから、言わないんです。本当は、晴海さんと結婚したかったなんて。ほとんど、家にはもどらなくてもときどきでも戻ってきてくる。演技でもいいから、夫婦でいられるなら。」
「何それ。できた奥さんですこと。」
私の言い分が、晴海さんには嫌味のように捉えられたようでとても気分を害させてしまいました。
それでも、私は素直な気持ちを言っただけなのです。
私には、彼方を待つことしかできないとわかっていますから。
周りの方から裏切られているのにどうして信じるんだ!っとよく言われます。
でも、私はずっと彼方に恋して、愛しつづけるんです。
だから、信じて待つしか私にはできないんです。
彼方の戻ってくるっていう言葉と彼方のぬくもりを信じて。
信じて待ち続けるのです。
帰ってくる彼方を……